神奈川(横浜を中心に三浦・湘南・箱根など)

かまくら山路(鎌倉市雪ノ下・小町通り)

 鎌倉は東の古都らしく蕎麦屋の多い町だが、すべてが特別うまいというわけにはいかない。しかし、やはり極上のそばも存在する。ここ、山路のそばがそれである。
 小町通りから奥まったところに店を構える山路。店に入ると、ガラス越しにそば打ち台と道具の並ぶ仕事場が目に入る。ここで使うのは、東北でも特に上質のそばの産地として知られる福島県会津・雄国産のそば粉。これを、つなぎを使わずにそば粉100%で打つ。天ざるも考えたのだが、今回は、特に契約農家で栽培されたという、鎌倉産の辛味大根を使ったおろしそばを賞味することにした。
 そばは滑らかな舌触りでありながら、ていねいに打たれたそばだけが持つ弾力と、そして豊かな風味。これなら純粋なせいろで味わうべきだったかな、とも思ったのだが、それはまた次回の楽しみに取っておくことにして、大根おろしに三つ葉、柚子皮が入った器に、しっかりとだしのとられたツユを入れ、そばを浸す。辛味大根の鮮烈な辛さとそばのやさしい甘味が混ざり合い、これはこれでやはりはずせない極上の取り合わせである。
 卓の上にはこの店のそばが非常に伸びやすいのでなるべく時間をおかずに食べてほしい旨、記されているが、確かに食べ終わってからせいろに残った切れ端を口に含んだら、出された直後とは比べ物にならないくらいやわらかく水っぽくなっていたので、こういうことかと納得した。のろのろ食べたり、つまんだそばを途中で切るようなのは論外、粋にそばが食べられない人は、わざわざこの店の安くないそばを食べることはない。
 取材:2002年6月。(当時)せいろ1,000円、おろしそば1,300円、天せいろ2,000円と、決して安くはないが、盛りはたっぷりとしている。11:00〜19:30、水曜定休。鎌倉駅から歩いて10分足らず。小町通りの北のはずれに程近い。Tel.0467‐25‐2249。





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