東京(都心から多摩地区まで)

室町砂場(中央区日本橋室町)

 いわゆる「室四砂場」(室町4丁目の意)。天ざる・天もり発祥の店、である。「何はなくとも天せいろ」というからには、この店を外すわけにはいかない。ひじょうに有名な老舗(明治2年=1869年なのかな、創業)だけあって、別にこのサイトでなくても紹介しているところはいくらでもあるのだが、記念すべき50軒目として、載せることにした。
 天ざると天もり、さてどちらにしようか。こちらはざるともりを海苔の有無ではなく、粉で区別しているようだ(だから「別製」か。ちなみに本来はツユで区別するものらしい。某蕎麦屋の説明によれば、もり汁に上返しを加えると御膳汁=ざる用)。ざるは更科粉らしく白い。好みはもっと風味の強いほうなので、今日は天もり。
 初めてこの店で何も知らずに天もりを頼むと、たぶん驚くか戸惑うか。冷たいツユと天ぷら盛り合わせ、せいろ、というようなオーソドックスな組み合わせではなく、天ぷらは最初からツユに浸って出てくるから。しかも、このツユが温かい。ちょうど、鴨せいろの鴨ネギがかき揚げに代わった感じ。うむ、天もりは元々こういう形だったのかと、なんとなくそばの歴史を見ているようだ。
 そばはひじょうに細打ちで、コシも強い。量は軽め。だから注文のときに「1枚でよろしいですか」と聞かれたのだな。小鉢の中の天ぷらは、芝エビと小柱のかき揚げで、いかにも江戸前って感じ。揚げ油はごま油だろうか、香ばしい。ツユには三つ葉も少々。ほかに薬味はねぎと本わさび。これは蕎麦湯のときまで取っておこう。ツユはやや甘口の濃い目。どっぷり浸すにはもちろん不向き。と、どこまでも江戸の蕎麦屋なのである。
 江戸前といえば、接客もそう。天井の高い店内に入ると威勢のよい高い声で「いらっしゃい〜〜」。帳場にはいつもきちんと人が就いている。蕎麦湯を飲みつつ、卓上に置かれた主の一言を読むのも楽しい店である。難点は、名店ということもあり会社の金にたかる輩(社用族・領収書族)が多いこと。店は粋だが、自分の金でそばも食えないやつは粋じゃないね。店の責任ではないが、そばが不味くなるので、そういう客とはスペースを区切ってくれると嬉しい。
 取材:2004年2月。(当時)天もり1,450円、天ざる1,550円、別製ざるそば650円、別製大ざる1,150円、もり550円、大もり900円、種込天ぷらそば2,500円、天ぷらそば1,550円(税込み)。営業時間は11:00〜20:00(土曜日は19:30まで)、定休日は日曜・祝日・第3土曜日。Tel.03-3241-4038。JR神田駅南口から南に向かう日銀通りと東口から南に向かう中央通りの間、近いのは日銀通りで、右前に花屋がある交差点を左、一方通行の道をちょっと入った次の角。入り口はさらに右へ回り込む。駅から徒歩5分くらい。JR総武快速線新日本橋駅、地下鉄銀座線三越前駅も近い。この2駅からは中央通りかこれと交差する江戸通り経由で。





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