東北(青森県・岩手県・秋田県・宮城県・山形県・福島県)

会津山都蕎麦 蕎邑(きょうむら・福島県山都町)

 蕎邑のそばを一言で表現するなら、「きりりとしたそば」ということになろうか。
 ここを訪れるのは約11年ぶり。1年前に松本の「そば博覧会」に出展していたのを食べて、なんとしても再訪したくなった。
 そばの里として知られる山都。多くが「予約でそばを食べさせる民家」という中にあって、蕎邑は常設の蕎麦屋である。山都駅の背後、会津の田園風景を見渡す高台にある。
 注文したのは天ざる。連れは鴨せいろ。それと、天然の舞茸天ぷらの貼り紙があったので、これも追加。
 最初に出てきたのは舞茸天ぷら。塩にちょっと付けて食べると、しゃくっとした歯ごたえ、軽い衣が絶妙。
 天ざるは、先にそばとそばツユ以外が運ばれてくる。天ぷらは、中くらいの海老2本、白身魚(何だろう)、舞茸、ピーマン。ほかに、刺身こんにゃく、ほうれん草とニンジンの胡麻和え。何ともバリエーション豊富。こちらの天ぷらは天ツユが付く。薬味は大根おろしとおろしショウガ。やはり軽くさっくりとした衣の天ぷらは食べ飽きない味。
 そしてそばが運ばれてくると、4人がけのテーブルはほとんど2人分使ってしまうほど。ざるに盛られたそばは、角の立った細打ちで、星の入ったサンドベージュの色合いが、いやがうえにも期待を高める。口に運べば、期待にたがわない、むしろ期待を上回る食感である。冒頭に書いた「きりり」とは、シャッキリとしたコシ、香り、喉越し。ぴんとした歯ざわりでありながら、硬くはなくしっかりとした弾力がそう感じさせるのだろう。そして挽きぐるみならではのそばの甘味。これがそば粉だけでつなぎを使わない生粉打ちだというのだから、そば打ちというのは奥が深い。ちなみにそばは100%地元産の玄ソバを石臼で自家製粉、水は飯豊山の伏流水を使う。
 えてして思い出のそばというのは勝手に美化してしまうものだが、これは思い出にかかった霞のようなものを取り払うほど鮮烈なそばである。ツユもきりっとした辛口で、出汁は効いているのだがまったくでしゃばらず、そばの風味を生かすためだけにあるような味。このツユの印象も加わって「きりり」とした味に仕上がっている。薬味に添えられるのは、本ワサビとネギ。刺身のようにワサビをそばに乗せて(ツユに溶かずに)食べると、また違った鮮烈な味わいが楽しめる。
 鴨せいろは鴨肉がたっぷり。ツユも甘味を抑えた辛口で、さっぱりとした後味。シャッキリとしたそばによくあう鴨汁である。
 これだけのそば、めったにお目にかかれるものではない。少なくとも、今年食べたそばの中ではNo.1の太鼓判を押す。
 取材:2005年10月。(当時)天ざる1,575円、鴨せいろ1,155円、もり735円、ざる840円、とろろそば945円、月見納豆そば1,155円、きのこそば(温・冷、10〜3月)1,050円。蕎麦会席(2名以上)2,625〜3,675円。営業時間は11:00〜15:00で、15:00以降は要予約(そばがなくなり次第閉店の場合もある)。定休日は年末年始以外には特にないが、不定休あり。Tel.0241-38-3344。福島県耶麻郡山都町中石打場3261-3。JR磐越西線山都駅から歩いて10分ほど。クルマは磐越自動車道会津坂下ICから15分ほど。お店のホームページ
 写真は上から、そば(ざると同じ)、天ざるの天ぷらと小皿、鴨せいろ、天然舞茸の天ぷら。





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