中部(静岡県を含む東海・北陸)

正家(しょうや・愛知県豊橋市) 2011年7月10日閉店

「鄙にはまれ」なんて言葉を使うと豊橋に失礼なのだが、豊橋駅前から路面電車に揺られて20分あまりの終点・赤岩口のあたりは、けっこうのどかな田舎なのである。そこにある古びたビルの一角で上等なそばにありつけるとは、まさに知る人ぞ知るといったところ。
 テーブルと小上がり各8席ほどの小ぢんまりした店。印刷されたメニューには載っていないが、店内に掲げられた黒板には「本日の限定蕎麦切」の文字。生粉打ちそば。産地直送、自家製粉というそば粉を使って打つそばは、基本が二八、そして限定の生粉打ち(十割)。今日は長野県信濃町黒姫高原産のそば粉。こんなこだわりを見せられると、400円高くても天せいろを生粉打ちでお願いしたくなってしまう。
 そばはせいろが2枚で標準なのだが、これを1枚ずつ時間差で供するところが嬉しい。そばは表面のヒダ、サンドベージュの色合い、ていねいな仕事ぶりをうかがわせる細打ちという、見た目を裏切らないコシと喉越し。真夏の生粉打ちでこれほどのそばに出会える喜び。
 ツユは出汁が効いたやや辛口。そばの甘味との調和がよい。天ツユは別につく。薬味は本ワサビとネギ(白い)、大根おろし。大根おろしは天ぷら用は別についてくる。
 天ぷらはやや小振りの2口大の海老が2本のほか、一口大のしし唐、ピーマン、なす、サツマイモ、シメジ、と、バリエーションも豊か。
「生粉打ち天せいろ」が2,000円というと東京並みの値段かなと思うが、そばのボリュームもちゃんとあるし、このクオリティを考えたらバリューなのは間違いない。「鄙にはまれ」?――いや、やはり「鄙」ならではなのだろう。
 取材:2006年7月。(当時)生粉打ち天せいろ2枚2,000円、天せいろ2枚1,600円、せいろ2枚800円、同1枚500円、生粉打ちせいろ1枚700円、2枚1,200円、とろろせいろ2枚1,050円。大盛は200円増し。営業時間は11:00〜15:00、土・日・祝日は17:00〜20:00も営業。定休日は火曜日と第2・3水曜日。Tel.0532‐63‐8398。愛知県豊橋市東田町伊原16‐1 赤岩ビル1階。豊橋駅から市電で22〜25分の赤岩口で降り、歩いて2分くらい。お店のHP





トップへ
戻る
前へ
次へ



Copyright (C)戯雅(giga) 2002-2024 All Rights Reserved.