東京(都心から多摩地区まで)
| 言わずと知れた日本そばの3大ブランド、藪、砂場、更科の一角の「総本家」。まぁ、更科にも本家筋、分家筋、無関係筋などがあるようだけど、ここは寛政元年(1789)に麻布永坂で蕎麦屋を興した創業者・布屋太兵衛さんの直系とのことで、当代御当主の名前も堀井太兵衛さん(明治8年に屋号の布屋を改め堀井を名乗ったと、「しおり」に書いてある)。 この日は土曜日ということもあり、地元の常連風、近所の勤め人風、家族連れなどで広い店内はほぼ満席。 さて、「更科」なんだけど、さらしなはあまり好みではないので、並そばにしよう。こちらは、そばは並そばのほかに「さらしな」と「太打ち」、さらに季節のかわりそばが選べる。この時期は葛切りそば。そして天せいろは「小海老」「かき揚」「車海老」と用意され、メニューの記述をワタクシが正しく理解しているならば、3種類(ということはたぶんかわりそば以外)のいずれかと組み合わせて注文することができるみたいだ。 では、普通のかき揚の天せいろを。 お店の特徴のひとつが、辛口と甘口2種類のツユが出てくること。辛口は輪郭がはっきりした、濃く深い味。煮詰めた本枯節の出汁と、本醸造醤油を3週間以上寝かせた「煮返し」を合わせたという。甘口のほうは、みりんの甘味が効いた感じのまろやかな味。さらしなに合わせて作られたらしい。たしかに、ほとんどそばの味がしないさらしなに辛口だと、ますますそばの味がなくなりそうだ。 「お待たせしました」(あまり待ってませんが)とやってきたかき揚天せいろ、そばよりも、かき揚に目を奪われる。すごい厚みというのか、あるいは「高さ」というべきか、大きいのである。しかも衣が軽くカリカリ。あ、種は芝海老。 淡いベージュのそばは細めで、歯ざわりと喉越し、コシ、そばの甘味と、日本そばの魅力が全部、バランスよく打たれた「王道」の味。量もけちけちしていない。 惜しむらくは天ツユや塩などが付いてこないということで、さりとてせっかくの2種類のツユもしっかり味わいたいし……ということで、かき揚は切り崩して口に運んでは、猪口のツユをちょっと舐めるという食べ方にした。あ、これでいいんじゃん。とくに広口の猪口でないということは、これが正当? 薬味は、本わさび、ネギ、ひとつまみの大根おろし。 江戸そばの魅力をちりばめた、基本であり、繰り返すけど「王道」なのだな。 取材:2006年10月。(当時)天せいろ(小海老・かき揚・車海老)いずれも1,570円(並そばの場合)、もり730円、さらしな840円、太打ち840円、季節のかわりそば940円。かけそば730円。営業時間は11:30〜20:30。定休日は水曜日。Tel.03‐3403‐3401。港区元麻布3‐11‐6。都営地下鉄大江戸線・東京メトロ南北線麻布十番駅の7番出口から3分ほど(ホームから出口までのほうが長いです)。 |
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