東京(都心から多摩地区まで)

千利庵(港区西麻布)

 知っていればすぐに見つかるが、偶然見つけるには難しい場所。簡素で適度に風雪を感じるたたずまいがいい。
 そばは常時2種類打っているようで、ほとんどのメニューで「せいろ」と「田舎」が選べる。近くの卓で「●●をせいろで」「これは温かいそばですがよろしいですか」「え?」「うちは細いそばがせいろ、太いそばが田舎なんです」というやりとりが聞こえてきた。温かいせいろ? いや、確かにもともとはせいろで蒸したと聞くし、西のほうでは温盛が売り物の蕎麦屋もあるそうだが、やはりここは共通言語を使っていただいたほうがいいのでは? ふつう、せいろっていったら冷たいもりそばでしょ。
 注文した天付もりそば二色は、さすがに冷たいそば。これで温かかったら怒るよ。
 二色のそばは、別々の器に盛られて出てくる。細打ちの「せいろ」はかなり細い。きゅっと引き締まった、コシのしっかりしたそばだ。表面はつるりとしていて、独特の歯ごたえ。ジワリとした感じではない。太打ちの「田舎」になるとつるつる感はさらに顕著で、ツユもあまりからまない感じ。うーん、やっぱり普通の細打ちが好みだな。
 ツユは、出汁の輪郭がはっきりと出たマイルド系。天ツユと共用。薬味には本わさびと一つまみの大根おろし、ネギが付く。
 天ぷらは尾頭付きの海老のほか、カボチャ、ナス、イカ。「海老は頭から丸ごと食べられます」と言う通り、からりと丹念に揚がっている。殻が歯に挟まるのはワタクシの歯並びのせいだ。
 天付だとちょいと値が張るけれど、もりは630円とリーズナブル。ただ、温かい「せいろ」同様、「天下ごめん」とか「月心」とか、メニューがわかりにくいのは、一見の客にはどうもなぁ。ま、コミュニケーションとればいいことだけど。
 取材:2007年5月。(当時)天付もりそばはせいろ・田舎各1,890円、二色2,100円、天付のりかけはせいろ・田舎2,100円、二色2,310円、もりはせいろ・田舎630円、二色1,155円、のりかけせいろ・田舎840円、二色1,365円。営業時間は11:30〜14:30と17:00〜21:00。定休日は第1を除く水曜日。Tel.03‐3400‐1782。港区西麻布2‐25‐19。西麻布交差点の渋谷寄りすぐ。電車だと不便だが、都営バスの「都01」(渋谷〜新橋)、「品97」(品川〜新宿)の西麻布停留所が便利。新橋方面行バス停の真ん前。
(写真に写っているのは「せいろ」のみ)





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