神奈川(横浜を中心に三浦・湘南・箱根など)

手打そば 寿徳庵(横浜市金沢区釜利谷東=金沢文庫)

 笹下釜利谷街道は、上大岡と金沢文庫を結ぶ街道。その南端近く、金沢文庫駅東口に近い旧道に面して建つ古びた蕎麦屋がこの店である。外観同様、店内も年季が入った昭和テイスト漂う空間。テーブルも椅子も、大衆食堂然とした質素なものだ。
 客席は、テーブルが2人用、4人用、相席の6人掛けで、あとは小上がりの4人席が2つ。
 普通の二八そばのほかに、生粉打ちの十割、季節の変わりそば(この店では季節の香蕎麦と呼ぶ)、韃靼そばがある。二色は二八と変わりそばの組み合わせか。この日の香蕎麦は抹茶切り。
 金沢の海といえば、江戸前穴子の水揚げ港。で、「穴子天せいろを十割でできますか?」と聞いたら、「300円増になりますが」とのことだったので、それでお願いすることに。
 で、出てきた天せいろは天ぷらのボリュームにちょっと驚く。穴子1匹分、半身ずつがそれぞれ3分割、合計6つに切られたもの。そばを扇状に揚げたもの、水引のように飾り揚げにしたナスも美しい。
 衣は軽くさっくり、穴子の身はふっくらとしている。天ツユは付かない。
 インパクトと成り行きでそばより天ぷらの話が先行してしまった。
 そばはしなやかなコシと喉越しの良い極細打ち。甘みと香りがたつそばだ。生粉打ちでこの均等な細さ、技術の高さがうかがえる。
 ツユは出汁のきいた濃口の甘め。……というそばツユに加え、辛味大根のしぼり汁を加えたツユと2種類が出てくる。この辛味大根ツユがうまい。そばの甘味が引き立つ辛さだ。
 薬味には本わさび、ねぎ、天ぷら用らしき大根おろしとショウガが添えられる。
 蕎麦湯は濃厚でトロトロ。
 これらに加え、そばの実を炊いたそば粥も付いてくる(写真左上)。これがまた滋味に富んでうまい。わさびを乗せ、ちょっとそばツユを垂らして食べると格別であった。
 たぶん、ご主人はそばというものが心底お好きなのだろうなぁと思わせる内容。
 なんというか、農村歌舞伎のごとく、素朴さと華が同居したようなそばである。
 取材:2010年4月。(当時)穴子天せいろ1,250円(十割300円増)、天せいろ1,350円(同)、もりせいろ600円、とろろせいろ850円、季節の香蕎麦900円、韃靼蕎麦900円、十割蕎麦900円、二色せいろ1,000円、鴨せいろ1,050円。温かいそばは、かけ600円、玉子とじ700円、天ぷら900円。営業時間は11:00〜20:00。定休日は水曜日。Tel.045‐783‐9772。横浜市金沢区釜利谷東3‐16‐1。京急線金沢文庫駅西口から歩いて10分ほど。





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