北関東(群馬・栃木・茨城)
| 過度な期待がもたらすものは、不幸な結末である――それはわかっていたつもりだが、まさかここでやってくるとは思わなかった。 通称「足利一茶庵」。今や一大勢力ともいえる一茶庵系蕎麦屋の総本山。その創始者の高名振りから「足利詣で」とまで言われた一茶庵探訪……。 その足利詣での機会に恵まれたのだから、期待はいやがうえにも高まっていたのである。 土曜の昼過ぎ、行列も覚悟していったが駐車場待ちも案内待ちもなく店内に。 メニューには、一茶庵系でおなじみの「おせいろ」をはじめ、変わりそばなどが並ぶ。あまり変わりそばには興味がわかないのでいつもであれば普通の天せいろなどを注文するのだが、足利詣でに舞い上がっていたことと、普通のそばが三色では付かないし選択制でもないということで、五色天もりを張り込んでしまった。これが間違いのもとだとも気付かずに。 ほどなくツユと薬味、次に天ぷらが運ばれてくる。天ぷらは10cmほどの海老天2本、カボチャ、ナス、しし唐。天ツユ付だ。 最後にそばが登場。同行した友人の三色はざる(籠)に盛られてきたが、五色は割子風の5段の器。普通のせいろ、田舎、さらしな、茶そば、芥子切りの5種類である。ちなみに三色の場合は田舎、茶そば、芥子切りの固定だという。静岡の「くろ麦」などでは選べたのだが、ここでは選択の自由はない。 全部が同時に出てきた時点で、ちょっと嫌な予感はしたのだが、食べ進むうちにそれは現実となった。写真を撮り終わってから器は積みなおしたのだが、それでもそばの劣化は速いのである。案の定、途中からそばがくっつき始めた。箸で手繰ると、器のそば全部がくっついて団子状に持ち上がる。 そば自体の味は悪くないのだが、味以前の問題としか言いようがない。店はこうなっている事実を把握してないとは思えない。ということは、そばを大事にする気持ちが足りないか、客においしく食べてもらいたいという気持ちが欠けているということなのだろう。 普通の天せいろを頼んでいれば、こんなことに気づかずに足利詣での思い出に浸れたのかもしれない。残念としか言いようがない。 一つ言えることは、一茶庵は横浜元町や鎌倉に行けば十分だということである。弟子や孫弟子のほうが数倍よい仕事をしてくれているおかげで、本店よりも上質なそばが近所で食べられるのは、ある意味幸福なことである。 付け足しておくが、ツユはマイルドなやや甘め、薬味はわさび、大根おろし、ねぎであった。 取材:2011年2月。(当時)五色天もり2,200円、三色天もり1,650円、おせいろ700円、さらしな700円、田舎700円、天せいろ1,350円。営業時間は11:30〜14:30と16:30〜19:30。定休日は水曜日、木曜日(不定休)。Tel.0284‐40‐3188。栃木県足利市柳原町862‐11。JR両毛線足利駅、東武伊勢崎線足利市駅のどちらからも1.6kmほど。駐車場は14台分。お店のHP。 |
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