中部(静岡県を含む東海・北陸)
| 期待が大きすぎて裏切られるということは往々にしてあるのだが、まれに期待の大きさをさらに上回る体験がある。 「たがた」のそばは、まさにその大きな期待以上だった。 壁面に溶け込むような外観はまさに隠れ家の趣。店内は掘りごたつ式のテーブル3卓とカウンター5席ほど。2階もあるようだ。 そばは通常の二八のほか、限定で十割と粗挽き十割の3種類が用意される。 天付メニューも天もり(天ざる)、あなご天もり、海老天もりと3種類(他に静岡らしく天おろしなどの冷がけも)。 粗挽きと少々迷ったのだが、あなご天もりを十割との組み合わせでお願いする。 そばは黒っぽい極細打ちで、これだけでも主人の腕前がうかがい知れる表情。この日のそばは鹿児島産とのこと。おいしい玄ソバを求めて鹿児島や宮崎(椎葉村)、徳島の奥祖谷などにも足を延ばすのだという。現在は静岡在来種の栽培にも力を注ぎ、あと2〜3年後には食べられるそうだ。 「今日の蕎麦粉は去年のものです。今年のはまだ風味が弱くて」とのこと。何が何でも新そばがよいわけでもないという姿勢も、研究のたまものだろう。 そんなそばは、噛めば甘味が広がり、強い香りが鼻腔に抜ける。コシもしっかりしていてクキッとした歯触りが心地良く、喉越しもよい。 ツユのほか、後述する天ぷらについてきた岩塩をちょっとつけて食べてみたが、そばの甘味がさらにくっきりと際立つ感じが印象的だった。 ツユは出汁のきいたマイルドな辛口。薬味は滑らかにおろされたわさびとねぎ。 天ぷらもそばに劣らず見事。肉厚で大きな穴子は外はパリッと、中はふっくらしており、衣が軽いのでボリュームが全く気にならない。穴子以外には、ナス、いんげん、舞茸、シメジ、カボチャで、いずれもさっくりとした食感が楽しめる。そして、天ぷらに添えられるのはおろし金に乗った岩塩。自分で削ってもよいが、必要な分はあらかじめ挽かれた状態で供される。 「たがた」のそばを一言でいえば「見事なそば」。なかなかこれほどうまいそばには出会えない。口コミサイトの投稿などは参考にならないと思っているのだが、評価の高さに間違いはなかった。 これだけのクオリティと評判であれば代金が高いのが通例なのだが、ある意味破格といえるコストパフォーマンス。東京などであれば4割以上高いメニューになるだろう。 その時々でベストなそばを選んで供するという主人のそばへの愛情がちりばめられた蕎麦屋である。蕎麦前も充実しており、次回はぜひ夜に再訪してみたい。 取材:2011年12月。(当時)二八(もり)630円、十割(限定)750円、粗挽き十割(限定)750円、天もり1,230円、天ざる1,280円(以下、ざるはもりの50円増、そばは二八との差額で変更可能)、あなご天もり1,430円、海老天もり1,530円、鴨せいろ1,380円。温かいそばは、かけ630円、温野菜天1,050円、温天ぷら1,230円、鴨南1,480円。大盛は250円増、ツユ、薬味おかわりは100円。営業時間は11:30〜14:00と17:30〜22:00(売り切れ終い)。定休日は月曜日。Tel.054‐250‐8555。静岡市葵区常磐町2‐6‐7。JR東海道新幹線・東海道線静岡駅西口から歩いて7〜8分ほど。お店のHP。
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