東京(都心から多摩地区まで)
| 大森海岸にある「大井 布恒更科」の支店で、本店のご主人の息子さんが営まれているという。2004年6月の開店時の案内を本店で見たのだが、宿題にしたまま9年も経ってしまった。 有名店だが店構えは小ぢんまりしている。いずれもテーブル席で、4人掛け5卓、8人掛け1卓というキャパシティだ。 本店同様、天付メニューの種類が多く、さらに季節の天ぷらも充実しているのは嬉しいところ。季節ものの稚鮎天もりを注文する。 基本スタイルは本店に準じる。違うのは卓上に揚げ玉の壺がないこと。 横長のせいろに3つの山に盛られた色黒で中太打ちのそばは、強靭なコシ。コネの過程で「寝かせ」の工程を入れるという「布恒更科」独自の打ち方の特徴なのだろう。エッジがきれいに立った美しいそばである。夏のそばでありながら、香りも甘みも強い。外二のそばでこれなのだから、生粉打ちはさらに風味豊かなのだろう。 ツユも独自の濃い辛口。とろみすら感じる濃さだ。蕎麦猪口が別に付いてきて、「分けて使われるならお使いください」という配慮は嬉しい。ツユに天ぷらの油を浮かべたくない、あるいは蕎麦湯を飲むときのツユの量を調整できるとメリットは多い。今は本店もそうなのだろうか。 天ぷらは、稚鮎5尾としし唐。天ツユや塩は付かない。身はふっくら、薄い衣はカラッと揚がった稚鮎の天ぷらは、ワタの苦味と身の甘味が絶妙。 薬味はネギ。天ぷらにはスライスしたスダチの上に大根おろしが乗って供される。 「布恒更科」のそばは絶品であることはもちろんなのだが、よそとはまったく似ていない際立つ個性が何と言っても魅力だ。余計なお世話だが、「更科」という文字からなまっちろく細い風味の弱いそばしかないと想像してのれんをくぐらない客がいるとしたら、客にとっても店にとっても不幸なことだと思う(御前更科そばもメニューにはあるが)。 取材:2013年7月。(当時)稚鮎天もり(季節もの)1,780円、きす天もり(同)1,780円、鱧天もり(同)1,990円、白海老天もり1,780円、ごぼう天もり1,360円、穴子天もり1,570円、海老天もり1,570円、かき揚げ天もり1,720円、もり880円、御前更科980円、生粉打ち1,100円、季節の変わりそば1,100円、鴨汁2,150円。温かいそばは、かけ880円、玉子とじ1,100円、厚切り鴨南ばん2,670円(スライスも選択可)。営業時間は11:30〜15:00と17:00〜21:00(土曜日は昼の営業のみ)。定休日は日曜日と祝日。Tel.03‐3545‐8170。中央区築地2‐15‐20。東京メトロ日比谷線築地駅2番出口から歩いて3分ほど、東京メトロ日比谷線・都営地下鉄浅草線東銀座駅5番出口からだと4分ほど。 |
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